製造方法は至って簡単で、新聞紙を細かく粉砕し綿状にしたものに、ホウ酸を混ぜたもの、と思えばよいでしょう。他の上質紙に比べ、新聞紙は繊維が長いので絡みつきが多く、断熱材に適しているのです。
セルローズの特徴として、綿のようになった繊維と繊維の間に空気が含まれるのは他の断熱材と変わらないが、その細い繊維の中に小さな空洞があり、この空洞が空気をダブルに保持する役目と、水蒸気を出し入れする役目の双方の働きがあります。
燃焼性
ガスバーナーを二、三分当てても、表面が炭化して黒くなるだけで中は燃えません。発煙もありません。三十分耐火を取得していますが、燃えないものと思ってよいでしょう。
防錆
ホウ素の項で耐酸性があるとなっています。この材料に接触していると、金属は錆びないものと思って間違いないです。近年の建物は、構造金物が非常に重要になっています。
防虫
詳しくは後のホウ素の説明で出て来ますが、アメリカでは中古住宅の害虫駆除に使われています。木材腐朽菌、シロアリ、ゴキブリ、ダニ、その他の食材昆虫に効果が高い。とあります。
吸放湿性
くどいようですが、水蒸気を吸ってまた吐き出す、いわゆる呼吸する断熱材は、これ以外にありません。この吸放湿する能力が非常に優れているのですが、それがどれほどなのか解かってはいません。今もわからない底知れぬ能力があるようです。
ホウ酸について
ホウ酸とはホウ素のことですが、これから述べることはホウ素の安全性が主ですが、少し専門的ですので、流し読み程度にとどめても良いでしょう。
ホウ素は自然界に広く分布している元素であり、重量割合で、地殻物質中に10ppm、土壌中に3?10ppm、海水中に4.5ppm、淡水中に0.01ppm含まれている。
植物にとっては不可欠の栄養素であり、植物の乾燥重量1s当たり5?100mgを必要とする。したがって、通常の動物飼料や食品中に存在し、通常、成人が飲食物により摂取する量は、一日あたり最低3.5mgから最大41mg(ホウ酸換算20?235mg)の間になると予想されています。
危険物質の分類、包装及び表示に関するEC理事会指令第六次修正では、分類の一つの指標に、ラットによる急性経口毒性値を採用しています。半数致死用量が2000mg/kg体重の物性は危険性分類には該当しません。
ホウ酸のラットに於ける急性経口毒性は3000?4000g/kg体重であり、ホウ砂では、4500?6000mg/kg体重です。単純な比較では、塩化ナトリウム(食塩)では、3750mg/kg体重でホウ砂やホウ酸と同じ程度と言えるでしょう。
ヒトのボランティアによる動態的研究によれば、500mgのホウ酸を含む水溶液を静脈注射により一回投与した場合、ホウ酸は尿中に迅速に排出され、21時間後には半減し、96時間後には完全に対外に排出される事が知られています。
米国の国家毒性研究計画(NTB)の技術報告では、ホウ酸の2500及び5000ppm混飼濃度におけるマウスを用いた2年間の慢性毒性試験の結果、「発癌性の根拠無し」と結論されています。哺乳類培養細胞を用いた一連の実験においても陰性でした。更に、ホウ酸及びホウ砂は変異原性物質ではありません。
ホウ砂やホウ酸は数多くの工業用用途に使用されています(年間消費量100万トン以上)。主たる用途としては、ガラス繊維、耐熱ホウ珪酸塩ガラス、窯業製品、過ホウ酸塩漂白剤等があります。同時に研磨剤から伸線加工まで、幅広い小口用途があります。無機ホウ酸塩は農業用肥料に使用されています。
ホウ砂やホウ酸は、通常の皮膚からは殆ど吸収されません。いずれの物質も、皮膚には有害では有りません。例えば目薬用の緩衝剤あるいは化粧クリーム用の防腐剤として多くの化粧品や医薬用調合剤に使用されています。(濃度5%を上限として)これまで、ホウ素化合物を利用する様々な産業でホウ素化合物が原因となった事故の例はありません。
木材保存剤として往来使用されてきた無機ホウ酸化合物は不揮発性であり、現在、問題が顕在化しつつあるVOCとは係りない。加熱してもガスは発生せず、高湿では溶けてガラス状になるだけで、処理剤を焼却しても有毒ガスは発生しない。人畜への毒性が低く環境への負荷が小さいが、木材加害生物(木材腐朽菌、シロアリ、ゴキブリ・・・シロアリの親戚、その他の食材昆虫)に対する効果が高い。
木材防腐・防蟻剤としてのホウ酸塩
ホウ酸塩は木材保存剤として万能である。木材1立方メートルを劣化生物から完全に守るために必要なホウ酸塩の注入量の目安は、ホウ酸5kg/立方メートルである(京都大学木質化学研究所 角田邦夫)。尚、JASではホウ酸1.2kg/立方メートルが基準値と定められている。
今日、使われているJIS認定の木材保存剤は、1立方メートルの木材処理に薬品だけで数千円はかかるが、ホウ酸塩5kgならば5百円ですむ。ホウ酸塩は木材組織中で固定せず、水分があればホウ酸塩濃度の低い方へ移動する。この拡散性のため、ホウ酸塩は加圧しなくても木材の中心部まで浸透するので、処理後の切削加工も可能である。
これに対し、JIS認定の保存剤は木材組織中で不溶化するため、加圧注入でも材表面から10mm程度しか入らない。従って材の寸法が大きい場合は、中心部は未処理のまま残り、割れ目から菌が浸入して内部が腐朽したり、シロアリに柱の中心を空洞化される例が多い上に、化学的に不安定であり経年効力低下はさけられない。
わが国で、ホウ酸塩が、木材保存剤として、使用されないのは、1960年に制定されたJIS「木材防腐剤の性能基準及び試験方法」にある。防腐処理をした試験体の防腐性能を測定する前に、耐候操作と称して、ビーカーの水に沈めて8時間高速攪拌する操作を10回繰り返す。水溶性のホウ酸塩はこの操作で100%失われる。JISは法的には任意規格であるが、JISに合格しない腐食処理をしても、住宅金融公庫が融資しない。
1960年当時は、欧米でも溶脱するホウ酸塩の利用には批判的な考えが強かったが、まもなく使用環境に応じて適切な保存剤を選択する「劣化区分」の考え方が普及し、ホウ酸塩が再評価されたが、わが国では、この不合理なJIS規格を21世紀まで持ち越してしまった。しかし、政府は既に、日本規格と国際比較との適合を約束し、また、改正建築基準法も性能規格化、国際化を明確に打ち出しているので、早晩、認められる情勢にある。
劣化区分 *電柱や、枕木、などのように、接地、暴露の用途では従来の溶脱しない薬剤を使用し、住宅など、非接地、非暴露の用途では、コストが安く、人畜に対する毒性が低く環境への負荷が小さいホウ酸塩を使用する。
海外でホウ酸塩はどのように使われているか
ホウ酸塩を木材保存剤として最初に実用化したのはニュージーランドで、わが国の加圧処理木材生産量に匹敵する年間42万立方メートルの木材が、ホウ酸塩で処理されているが、非接地、非暴露の原則を守って、事故のおきた例はこの40年間で皆無であるという。
ヨーロッパではホウ酸塩は主として木材防腐用に使われている。英国では1960年代からホウ酸塩で拡散処理された北欧やカナダからの木材が輸入され、住宅用に使用されている。
アメリカでは、1970年代にホウ素系木材保存剤の積極的利用が始まり、まず、中南米から輸入される木材の虫害が解決され、1980年代には産・学・官の共同研究の結果、アメリカ木材保存協会(AWPA)で、認定された。
1990年代、不注意に持ち込まれた台湾シロアリが天敵のいないハワイで、急速に繁殖し、州政府は木材防腐を義務づけた。種々の薬剤でシェア争いがおこったが、現在ではホウ酸塩が90%のシェアを占めている。
ホウ酸塩が濡れた木材中で移動するという性質を巧みに利用した使い方として、チョーク状に固めて焼結したホウ酸塩を腐朽の発生個所近くに埋め込む。腐朽は水分を含んだ木材で起こるが、含水率が高まるとチョーク状のホウ酸塩が溶け出し、腐朽を阻止する。
英国や北欧では、この技術は木製窓枠の現場修理、電柱や枕木の維持管理に応用され普及している。(ホウ酸塩の欠点である溶脱性を裏返して利用した技術)又、アメリカでは中古住宅の害虫駆除のため、ドリルで木材に穴を開け、内部にホウ酸塩の濃厚溶液を注入することが行われている。
この方法の特徴は安全が保障されていることで、駆除期間中住人の立ち退きが不要であり、レストランの場合、営業しながら害虫駆除できるという利点がある。 (メーカーレポート)より
《関連リンク》
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第七章 良い家とは