住いのクレームで意外に多いのが、「音」であって、断熱、結露、防音の内、約六割が音のクレームです。しかし、工務店の答えは「音がするのは仕様がない」「昔から音はした」、「どこも同じだよ」、「お客さんも音のことは諦めている」と、異口同音です。
先にも述べましたが、現在、通常の価格で防音できるのは、Z工法しかありません。
音の正体
池に石を投げ入れると、波紋が広がります。いくつかの高い山と低い谷を描きながら、徐々に消えていきます。音の場合は空気圧を低くしたり高くしたり、空気の粗密を作り出して振動させます。これが音です。宇宙に音が存在しないのは、真空だからです。
遮音
音は空気圧の振動ですから、絶対的な力でこの振動を止めれば音はしない。これが遮音です。絶対的な力とは重さのことで、鉛、鉄、コンクリート、砂などのように比重が重いほど良いのです。
コンクリートやガラスは、水も空気も通しません。なのに音は反対側に出てきます。これは重量が足りず、空気の振動がコンクリートなどを振動させているからです。
吸音
蒲団をかぶって大声で叫んでみても、周りの人にはあまり聞こえません。薄いガーゼマスクでも、語尾が聞き取れません。では、音はどこへ消えてしまうのでしょうか。
音が繊維のような多孔質の物の中に入ると、繊維と繊維が激しく振動して摩擦を生じ、その摩擦によって音のエネルギーが摩擦熱に変わるのです。高音部ほど激しく振動するので、減音が著しいのです。セルローズファイバーの防音の原理の大部分は、この吸音なのです。
太鼓現象
太鼓という楽器は、叩いた側よりも反対側に大きく響くようになっています。胴はあくまで硬く、皮は張り詰めるほど大音響になるのです。
伝播音
空中を伝わる音のことですが、速度は毎秒三百四十メートル(マッハ)であると小学校で教えています。音は硬いものほど早く伝わり、水中、鉄、コンクリートなど、五キロを超えるものまであります。
階上や階下のおしゃべりが聞こえるようでは、駄目です。通常の音量で音楽などをかけても、何の音楽か分からないようなものであるべきです。
重量衝撃音
柱などの構造材を伝わる音で、なくすことは不可能に近いが、以下に小さく出来るかが大きな問題です。子供が飛んだり跳ねたりする事は阻止できないが、音はしても我慢できる程度にすることは出来ます。
軽量衝撃音
スリッパの音、掃除機の音、箸を落としたぐらいで響くようでは駄目です。Z工法では、この位の音は聞こえません。
共振
冷蔵庫などのモーター音は、信じられないほど小さくなりました。しかし、このようなものでも、コンクリートの部屋の真ん中に設置しておくと、場合によっては壁からの反響音と共鳴して、とてつもなく大きく響き渡ることがあります。
マンションなどでは、変電室のトランスや水道のポンプなど、コンクリートの部屋に閉じ込めると、周囲の部屋では寝ていられないほどの音になります。
二十四時間換気などは、モーター音や風きり音が低くうなります。このような現象を「重低音」と言っています。枕に耳をつけると、振動音が良く聞こえるものです。
音の実情
私たち日本人は、吸音材の中で育ってきました。畳、土壁、襖、障子、土間、板、柱、全部が吸音であり、全部が調湿しました。いまはどうでしょうか。
コンクリート、ガラス、プラスチック、フローリング、ボード、ビニールクロス等々みんな横文字、みんな反響材ばかり、みんな吸湿も放湿も出来ないものばかりになりました。
あまりにもニセモノが多くなって、さもそれが当然のように使われだすと、結露と音に悩まされることになります。二十四時間換気などと平気で恥かしげもなく使われ、ますます音は増長するように広がっているのですが、それに慣れるとトイレの水洗音がジャーッと家中を駆け巡っても、誰も驚かなくなりました。恥かしくもなくなりました。
どこか狂っていませんか、と、建築家を名乗る諸氏にお尋ねしたい。建築雑誌は星の数ほどありますが、「音」の「お」の字も載せていません。また、載せるほどの技量も技術もない。それでも一応もっともらしい建築論を述べています。
空洞を覆い隠してボードを貼る。そのボードに音がぶつかれば振動を起こして反響音になることは明らかです。ですから二階のトイレを使用すると伝播音、衝撃音が反響を繰り返し建物全体に響き渡る。それが普通だと思うようになった神経が恐ろしいのです。
第六章 セルローズファイバー