「日本文化はカビの文化だ」これは「梅干し博士」「しゃべる博物館」の別名もある博覧強記の樋口清之先生の名言です。続けて、「カビは零度から五十度までの温度で生える菌類だが、その最適温度は二十から三十五度、湿度は七十パーセントである。まさに、この条件こそが日本の風土そのものである。」
「また、室内にカビが生えるのを防ぐために、日本の家屋は通気性をメインに設計されてきた。室内の湿気が七十を超さないように、たえず乾いた泥壁で湿気を吸い取る。床下に大きい通気用の空間を置いて、防湿と排気を考えた。紙障子が、和紙であるために、保温のほかに、湿気調節に果たした役割はおおきい。」梅干し博士はさすがにお見通しであり、物の原点を教えておられます。
上の条件を備えた我が国では、材木に、結露の次にカビが生え、シロアリがカビを食べに現れるまでに時間は掛かりません。結露がなければ、建物は永久に崩壊しないのでは?と思うほど結露はいたずらをします。そして結露があるばかりに家の寿命は・・・
結露とは
結露とは何か、どうして発生するか、それは次の三点を知ってもらえば十分と思います。
A 水蒸気の粒子の大きさ
B 水蒸気の飽和量
C 水蒸気の流れ
A 水蒸気の粒子の大きさ
水蒸気一個の大きさは、十万分の四ミリと言われています。それを何かと比較するのは不可能ですが、ともかく空気中の物質の中で、もっとも小さなものです。木造家屋では雨と風が大敵ですから、これを防ぐのに透湿シートを柱の外側に張り巡らします。透湿シートとは、水蒸気より少し大きい穴が網目のように空いている物です。風も水も通さないが水蒸気だけは自在に出入りできるのです。
B 水蒸気の飽和量
「湿度百パーセントと言うのは水のことじゃないか?」。ある工務店の社長は確かにこのように発言されたので、思い出してもおかしくなって悲しくなります。これでも住宅を作る資格があったり、何かと仕事を取ってくるから建築業界とは摩訶不思議です。水蒸気は、気温によって空気中に含まれる量が決まっています。三十度の気温では三十一・八三グラムの水分が限度(飽和点)であって、それ以上は空気中に含むことは出来ません。「長崎の気温は三十度、湿度は七十パーセントです」このような予報があれば、一立方メートルの空気中に、約二十二・三グラムの水蒸気が漂っていることになります。
C 水蒸気の流れ
温度と湿度(水蒸気)は水のように高いほうから低いほうに流れて、その反対はありません。冷蔵庫の扉を開けるとヒヤーとした冷気が一度に襲ってくるように感じます。実際には、外の温度も湿度も高い空気が、ドーッと冷蔵庫に入ってゆくので、中の冷気が押し出される現象です。
結露はどうしてできる
A、B、Cの三要素が解かれば、結露は簡単なものですから図イの現象は理解できるでしょう。断熱が完全な場合、ガラス戸に温度と湿度が流れ、ガラス戸に近いところの空気が冷えて、その近辺では水蒸気が飽和点を越えて水滴となり、ガラスに付着するのです。
結露には、夏型、冬型、内部結露、外部結露、逆転結露、などと呼ばれる現象がありますが、原理は同じです。
冬型結露は、温度こそ低いものの温度差が大きいので、この時期の結露が一番多いのです。
夏型結露の特徴は、日本独自の高温多湿のため、温度差はそれほどないのですが湿度が八十から九十パーセントと飽和点に近いものですから、五度前後の少ない温度差ですぐに結露します。
内部結露と言えば壁内のものをさすほど、多くのものは壁の中に発生するのですが、場所が場所だけに長年にわたり徐々に発生していたものが表に現れたときにはすでに遅く、木材などがすっかり腐食していたりするから油断できないものです。
外部結露は見えるものですから、対策が早ければ被害は防げるものです。
逆転結露。この結露は全く内外を逆にした現象です。外から進入した水蒸気は、気密層の外で冷気と出会い、断熱材(グラスファイバー)の中で結露をして、結露水は断熱材を水浸しにします。グラスファイバー(無機質のガラスせんい)は呼吸しないので、そのまま水を含んで断熱能力が半減し、ひどいものは夏の終わりころには水をいっぱい含んだスポンジ状態になります。呼吸をしない断熱材は、欠陥です。
ALCの結露
先に述べたように、ALCとは、気泡コンクリートと訳せるでしょう。不連続気泡があるので、水をためることが出来ます。その上、吸水性が良くなかなか乾きません。ALCは、外側に、気密性の高い塗装をしなければ成りません。その為に、ALC自体に結露するのです。
このような吸水が、壁から流れ出て内装ボードに染みてくるのですが、それを発見するまでに、ALCの水分が部屋全体を底冷えさせるからたまりません。半端に吸水したものは、永久に発見されないから、ALCは断熱が良いと言うのは「うそ」です。だまされてはいけません。
合板の結露
ツーバイフォー工法では、構造材として合板を外部側に使用します。合板は、四、五枚の薄い板を接着剤で固めてあります。この接着剤が化学接着剤ですから透湿しないのです。合板は木のような物であって木ではないのです。低断熱・高気密では「結露してください」と言うような、そんな作りになってしまうのです。意外と、ツーバイフォー住宅の結露は多いのです。
結露対策
ログハウスで結露は発生しない。木はなぜ結露しないのか?それは水蒸気の休憩室がたくさんあるからです。木は、セルロースが五十パーセントで残りはリグニンという物質などで出来ています。セルロースには、非常に小さな穴が無数にあります。その穴が水蒸気の休憩室になるのです。
木から、セルローズファイバー(木質繊維)を取り出して作るのが紙です。そのセルローズファイバーで作った断熱材があります。現在、呼吸する断熱材はこれしかありません。この断熱材を使った「Z工法」で、結露は百パーセントなくなります。